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一般社団法人 福島町まちづくり工房
創業
代表理事の平野松寿さん
←代表理事の平野松寿さん

平成28年(2016年)、福島町が町の活性化を狙い企画した、町民による町民のためのまちづくり法人が設立された。それが「一般社団法人福島町まちづくり工房」である。福島町役場内にオフィスを構え、町の施設管理や観光事業の企画・運営を行なっている。

現・代表理事の平野松寿氏は東京のアパレル会社で働いていたが、弟と家業を継ぐために13年ぶりに福島町へUターン。折しも町ではクルーズ運営を始めとしたまちづくり事業を立ち上げる動きがあり、賛同した平野氏も出資者として参加。上述の通り平成28年11月に一般社団法人福島町まちづくり工房が設立された。
設立前の話し合いの場で「若い人も理事として是非参加してほしいという話になり私が理事として参加することになりました」と語る平野氏。
元々は出資者の一人に過ぎなかったはずだが、気がついたら理事として担がれ慣れない海の事業の準備に取り掛かることとなった。すると間もなく前任者の外部スタッフが辞めてしまい事務局を動かす人間が誰もいなくなってしまう。そこから平野氏は積極的に動いた。指定管理者として温泉施設の管理業務を行いながら、クルーズの開業に向けた膨大な手続きをこなし、町民数百名を対象にして数十回にも渡るモニター乗船も実施した。そして、2年以上の準備期間を経た令和元年(2019年)、ついにクルーズは本格運行に漕ぎ着けた。
「一般社団法人 福島町まちづくり工房」の場所を地図で確認できます。
創立 平成28年11月
代表者 代表理事 平野松寿
住所 〒049-1392
北海道松前郡福島町字福島820番地 福島町役場2階
TEL 0139-46-7822
FAX 0139-47-4504
E-mail info@iwabecruise.com
URL 岩部クルーズhttps://iwabecruise.com/
岩部の売店https://iwabenobaiten.com/
 
岩部クルーズ
福島町岩部地区には、人の手が入っていない素晴らしい景色が数多く残っている。特に「青の洞窟」は透き通った海の青が洞の中でゆらめき、息を呑む美しさを誇る。そんな「青の洞窟」を始めとする美しい海の景色を堪能するボートツアーが岩部クルーズだ。
岩部クルーズには大きな特徴が3つある。一つ目は「グラスボート」。クルーズの運行にオリジナリティが必要だと考えた平野氏は、準備期間中に様々なボートツアーを視察した。中でも印象的だったのは小樽のボートツアーが導入していたグラスボートだった。グラスボートは船の中央部に設けたガラスの船底から海の中を覗くことができる全道でも非常に希少な船である。平野氏は小樽グラスボートの船長を訪ね、意気投合した中でボートの設計図を貰い受け、地元福島町の造船所の協力も得て岩部クルーズ専用のこだわりのグラスボートを誂えた。
特徴の二つ目は「専任の生ガイド」である。平野氏はボートツアーの視察中、予め録音されたガイド放送や、船長がお客さんの背後で話すスタイルではガイド内容が耳に残りにくいことに気がついた。そこで岩部クルーズでは船長とガイド役は二名で分担し、ガイド役が船首でお客さんに語りかけるように生ガイドを考案。ガイドの内容は町に関わる歴史を徹底的に調べ上げて台本化し、春には船上で繰り返し実演練習を行いながら内容を練り上げ、ガイド役にはまず平野氏自身が就いた。
特徴の三つ目はドローンを使用した記念写真である。岩部クルーズのガイド役は船長兼任ではないため、ガイド役には船上でできることがもう少しあると考えた平野氏に「船からドローンを飛ばして記念写真を撮る」というアイディアが閃いた。こうしてボートツアーでは非常に珍しいドローンからの記念撮影が実現した。ドローンが撮影した美しい映像は岩部クルーズのホームページからも見ることができる。
人気の青の洞窟
▲人気の青の洞窟

船底から海中を覗けるグラスボート
▲船底から海中を覗けるグラスボート
 
四季とクルーズ
「岩部の海の透明度は、7月の後半と8月後半〜9月中旬頃が特に高くなります。天候によっても見える景色は変わってくるため、リピーターになるお客様もいらっしゃいます。」という平野氏。季節ごとの楽しみがあるそうだ。春は8割もの高い確率でイルカが姿を見せ、夏は海も綺麗で暖かいためゆっくり景色を楽しむことができる。秋はエチゼンクラゲの群れが現れることもあるなど、季節によって見える景色は変わってくる。季節ごとの景色に魅了されて、春、夏、秋と年に何度も訪れるリピーターのお客さんもいるという。
ドローンから撮影した澄んだ海とグラスボート
▲ドローンから撮影した澄んだ海とグラスボート
 
函館市公式観光情報サイト「はこぶら」で世界に情報発信
クルーズオープン時、お土産品がないことに気づいた平野氏は商品開発にも着手した。
初めに作ったのは、海のように透き通った色が特徴の「青の洞窟サイダー」だ。岩部地区には自販機や商店がなかったため、クルーズ客が飲み物を確保できないことがないようにという配慮からだ。津軽海峡の塩を使い、淡い塩気と控えめな甘さが後を引くこのサイダーは初年度から20,000本以上を売り上げる人気商品となった。現在では「青の洞窟サイダーシリーズ」として、「岩部海岸レモネード」や地元高校とのコラボ商品のサイダーなどへと展開を続けている。
地域の特産品である鮑をつかった「あわびカレー」も人気の商品である。「昔は前浜で採れた鮑などの貝を肉の替わりにカレーに入れていた」という話を町民から聞いたのが開発のきっかけだ。また町のハンターから、駆除された鹿を何かに利活用できないかとの相談もあり、調べてみると食肉加工は施設建設が必要となりハードルが高い。そこで、鹿角を使った商品としてアクセサリーや犬のおもちゃを考案し、鹿肉は犬のジャーキーとして商品化することにした。
「グッズ販売をするにあたって最初は町の人と温度差があったが、少しずつ信頼して貰えるようになり今では次に何をするかなどと聞いてくれるようになった」と語る平野氏。町の人々との積極的な交流は今後のグッズ開発にも大いに活かされそうだ。
青の洞窟サイダー
▲青の洞窟サイダー

あわびカレー
▲あわびカレー
 
岩部を海のテーマパークに
今後の展望にもオリジナリティが光る。平野氏は岩部クルーズを道南観光のスタンダードに育て上げ、岩部地区を海のテーマパークにしたいという。テーマパークと言っても大型の箱物をメインとした量産型のそれではない。
「大きな遊園地やリゾート施設ではなく、野営場やコテージ、川遊びや山の散策路、そこに釣りやカヌーなどのアクティビティがあって、ちょっとしたカフェなどがあれば良いなと思っています。トンネルを抜けた先の岩部集落一帯が『田舎暮らしのテーマパーク』のように広がるのが理想ですね」と語る平野氏。岩部クルーズやグッズ開発での工夫を凝らしたアイデア力が、岩部のかけがえのない資源と交われば、それはそう遠くない未来なのかもしれない。